6  白峰村

恐竜化石壁

 白峰村からはたくさんの恐竜化石が出ています。初めて恐竜の化石が出たのは今から15年ほど前ですが、尾口村との境にある桑島というところで、中学生の女の子が道路上で拾った石に化石が含まれていたのだといいます。
恐竜化石壁 桑島で最初に発見された恐竜の化石は肉食恐竜の歯で、その後、草食恐竜の歯の化石なども見つかりました。これらの化石は肉食恐竜は白亜紀のメガロサウルス、草食恐竜は同じく白亜紀のイグアノドンの仲間とされています。
 この恐竜の化石の出るところは恐竜化石壁と呼ばれている崖で、国道157号線を金沢方向から行くと手取川ダムを過ぎ、いくつもあるトンネルを潜り終わって、漸くダムの湖の端に来た辺りの左側、川の向こう岸で国道からよく見えます。しかし、見た目は特に変ったところもない普通の崖と同じだから、どういうところか少々知った上で眺めた方が良いようです。(右の写真は恐竜化石壁)

 桑島の恐竜化石が出る崖は植物の化石もたくさん見つかるところで、明治7年にライン博士というドイツの人が日本で初めての植物化石を採取しているし、木の幹や根が生えていたままの状態で化石になって残っている日本で一番古い場所として、国の天然記念物になっています。
 恐竜の化石がたくさん出ている地層は手取層群と呼ばれていて、中生代のジュラ紀後期から白亜紀前期(1億4000万年前から1億2000万年前)のもので、白亜紀前期の地層からはトリティロドンという動物の化石も出ていますが、これは恐竜ではなく恐竜が出現する前の哺乳類型爬虫類で、化石はその最後の生き残りだったと見られているようです。
 この地層は何も石川県内にだけあるわけではなく、石川、福井、富山、岐阜にまたがっています。そこで、福井県の人が、石川から出たのならオラが県からも、というので勝山市の以前にワニの化石が見つかったところに目を付けて掘ってみたら、肉食恐竜の歯の化石が出てきたそうです。同じ手取層群といっても三つほどの層に分かれていて、桑島の辺りは比較的古い中層から上層の下部にかけてで、勝山の方はより新しい上層の上部の方です。それで年代が違いますから、桑島から化石の出るものを白峰恐竜動物群、勝山の方から出るものは勝山恐竜動物群と呼んで区別しています。この手取層群は日本における代表的な恐竜化石の産地で、日本で発見されている恐竜化石の90%が出ているそうです。また、白亜紀前期の恐竜の化石というのは世界的に少ないそうで、手取層群は貴重な恐竜化石の宝庫と考えられています。

 最近は世界的にちょっとした恐竜ブームですが、日本で恐竜についての関心が高まったのは、白峰村で恐竜化石が発見されてからだろうと思います。その発端が専門の研究者でもない普通の女の子が、自分が拾った石ころに化石のようなものが入っていることに気付いたことだったというのは、ぼくにはちょっと愉快に思える話です。

白峰村の民家 ところで、恐竜化石とはまるっきり関係ない話ですが、白峰村の中心部は、昔は牛首村と呼ばれていました。民宿などが並ぶ中心街から少し外れた辺りには、昔ながらの家並みが残っています。白峰独特の形をした家が残されていて、恐竜化石に劣らない貴重なものに思えます。(左の写真)
 この白峰村というのは、白山麓のほかの村々にはない独特の雰囲気があります。概して県境の町や村というのは、隣接する県の雰囲気を兼ね備えているようなところがありますが、そういうのではなしに、白峰村はそこだけ独立しているような印象なのです。それがどうしてなのかは分からないのですが。(平成12年4月1日 メキラ・シンエモン)


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