ふれあい昆虫館

ふれあい昆虫館全景 最近、県が作った施設でもっとも気が利いていて、もっともすてきなところが「ふれあい昆虫館」だとぼくは思っています。
 はばからずに、こう書いてしまうほどぼくは虫が好きなんですが、虫は嫌いだという人もいるでしょうね。確かに見た目が気持ち悪い虫も中にはいるし、昆虫は人や家畜、作物に害をなすことも、時には命を奪うこともあります。他方、昆虫が、地球の自然環境が維持されていくための重要な役割を担っていることも、忘れてはいけない事実です。昆虫がいなくなった世界は死の世界であり、人もまた生きていけないと、40年前にレイチェル・カーソンが「沈黙の春」を書いて極めて衝撃的な警告をしています。
 しかし、だから環境問題を考えるためにも昆虫の標本を見よう、というのではありません。また、ぼくは昆虫採集をしませんし、昆虫に詳しいわけでもありません。あの多種多様な形と色をした生き物を見ているのが好きだというだけです。前置きが長くなりました。

糞玉を転がすスカラベと横取りしようとする横着者糞に群がるスカラベ 順路に従って展示室に入ると、最初の展示は四つのジオラマです。入ってすぐが日本の雑木林を再現したジオラマで、タヌキとイタチがこっちをじっと見ています。勿論、剥製です。次の三つのジオラマの中に北アフリカの平原を作ったものがあります。目立っているのはレイヨウの剥製ですが、その足元で糞に群がって、ころころしている甲虫は、あのファーブルの「昆虫記」の巻頭を鮮烈な印象で飾っているスカラベです。最初のジオラマ展示の一つにスカラベを入れた理由が「昆虫記」を意識したものなら粋な計らいです。たとえそうではなかったとしても、ぼくには気が利いていると思えます。
チョウの園のオオゴマダラ ジオラマに続いて、数多くの珍しい甲虫や美しい蝶の標本を展示した部屋があります。しかし、ここ「ふれあい昆虫館」で何よりもすばらしいのは、その次の展示コーナーで、飼育されている昆虫をガラス越しに見られることでしょう。やっぱり生きて動いている虫を見る方が楽しいし、活動している虫の姿を見られるのは嬉しいことです。水生昆虫などまったく感動します。ぼくなどは小学生の頃、学校の帰りに田んぼでミズカマキリやガムシを捕まえたものでしたが、今の子供にはとてものこと、できない遊びになりました。また、蝶の飛び交う温室には圧倒されます。この温室にはウツボカズラのような珍しい植物もあります。

 「ふれあい昆虫館」には、普通は子供連れで行くでしょうね。ぼくは二人の姪と行きます。休日はたいへんな人だし、子供がいると自分が心行くまで見るということはできません。しかし、子供は大喜びだし、あの虫は何んていうの、何をしているの、と子供に聞かれて、それに答えてやるのは、虫を見ることとはまた別の楽しみです。(平成12年3月25日 メキラ・シンエモン)


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