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近ごろは金澤と書くのがはやりです ―金沢らしさの風景―

梅は咲いたかオウレンはまだかいな

 この冬の金沢は雪が多いともう11月から長期予報で脅されていましたが、予報に違わずさっそく12月の中頃にまとまった雪が降りました。でも言うほどの積雪にはならなかったから、ああ、こんなものか、と思っていたら、年明け7日から降り始めた雪は9日になって3年前の大雪を彷彿とさせる降り方となり、ついには積雪が60センチを超えて市の除雪作業は全然間に合わず、連休は朝も昼も晩も雪すかしに追われヘトヘトでした。そのあとも強い寒気が毎週のように襲ってきて、雪は降って積り融けてはまた降って積り融けるということを繰り返しています。それでこの冬の寒さはやっぱり厳しいのかというと、雪から次の雪までの間は春のように気温が上がるので、均してしまえば特別厳しいというわけでもないのかもしれません。今日2月13日は17度まで気温が上がりました。


 平地では雪がおおかた融けた1月の20日過ぎ、まだ雪の残る大乗寺丘陵公園に登ってみれば、もう八重唐梅(やえとうばい)の花が咲いていました。雪に映える紅梅を観る、雪国ならではの楽しみです。風情はありませんが・・・。ところで、ぼくは梅が咲くと「東風吹かば」が決まって頭に浮かぶのですが、今年はどういうわけか「梅は咲いたか、桜はまだかいな」と口ずさんでしまいました。小唄の出だしのフレーズですが、その意味も知らなければこの続きはどうなっているのかも知らないのに、それが「梅は咲いたかオウレンはまだかいな」に発展してしまって、まだ出ているはずはないけど一応・・・、と期待半分に毎年オウレンを探す場所へ行ってみました。雪は消えていましたが枯れた松葉の覆う地面にオウレンは見当たりません。やっぱりね、でした。

2021年1月28日 2021年2月9日

 それから数日後の気温が3月下旬並みに上がった26日、今日はどうだろうとやはり期待半分に出かけて行くと、一株、花を半分開いて出ていました。もっとないかと探すともう一株出ています。なんだかホッとして嬉しくなりました。雪が少なかったおととしは12日に咲いたことを「山法師とアルキメデス」の中で書きましたが、ほとんど雪が降らなかった去年はもっと早くて9日でした。では今年の26日は遅いのかというと、そうではなくてこれは普通です。雪が地面を覆っていれば出ていても見つけることはもちろんできません。3年前の大雪では雪が消えて地面が露出した2月28日にはじめて見つけましたが、あの雪の下で出ていたということはなかったろうと思います。では地面に雪がなければ寒い年でもオウレンはいつもの年と同じころに咲くんでしょうか、というようなことを考える前に、そもそも今年の冬は寒いんだろうか、雪がよく降るし大雪もあったからそう思っているだけではないのかなという気がします。

2021年1月26日 2021年1月28日
2021年1月31日 2021年2月10日

 確かに終日氷点下という日は何日もありますが、寒い日が続いたあと今度は暖かい日が続くということを繰り返す、韓国の冬にみられる三寒四温と似た感じに気温が変化していて、その暖かい日というのが3月下旬から4月上旬並みにグッと気温が上がっているから寒さは相殺されてしまうんだろうと思います。それでオウレンの花が咲くのがいつもと変わらないということなら、ぼくらの感覚ではもうメチャクチャにしか思えないこのところの季節がめぐる様相、すなわち、早く来る春、いつまでも続く夏、知らないうちに過ぎ去る秋、雪が降る日だけの冬、という異常気象ぶりも、山で自然に生えている草花にとってはそれほどのことではなく、彼らにとってはいつもと変わらぬ季節が回っているのかもしれません。いや、違いますね、彼らが季節を考えて咲いているわけはなく、創造された時の約束を守って条件が満たされた時に花を咲かせているだけなんでしょう。それが自然の中に生きるということなのなら、ぼくら人間は自然の中にいてどうにも自然の中の存在ではいられないみたいです。

2021年2月11日 2021年2月13日



 立春が過ぎて旧正月を迎えても金沢ではまだ春一番は吹きません。大乗寺丘陵公園ではもうリュウキンカが咲いています。春は遠いのか近いのか、今年、孤高のあんずはいつ咲くんだろうか。(2021年2月13日 メキラ・シンエモン)

2021年2月13日




写真:メキラ・シンエモン



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