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SNOOPYの飛行機

 職場の子がUNIVERSAL STUDIOS JAPANのお土産に買ってきたお菓子の箱のイラストはサンタクロースの服を着たスヌーピーでした。サンタクロースになってもよく似合う、と思いながらお菓子の箱を眺めていたら、スヌーピーのパイロット姿を思い出しインターネットで探してみると、キャメルに乗ったスヌーピーが出てきました。えっ、キャメルか、と思いました。このキャメルはラクダのことじゃなくて、もちろんタバコでもなくて、飛行機でキャメルといえば「ソッピース キャメル」のことです。

ソッピース キャメル
 第一次大戦のイギリス空軍の複葉戦闘機で、操縦が難しかったそうですが空中戦ではイギリス機の中で一番強かったと言われています。キャメルという名前は機首の機関銃カバーがラクダのこぶのように見えるところからつけられたそうです。
 なんでスヌーピーが「キャメル」に乗っているのかなと思ったら、リヒトホーフェンと空中戦をする「レッド・バロン」というエピソードがあるらしく、PlayStation2にもあるみたいです。特別スヌーピーのファンというわけでもないし、ゲームにも関心がないのでよく知りません。 空中戦の相手のリヒトホーフェンは飛行機じゃありません。マンフレート・フォン・リヒトホーフェン。第一次大戦のドイツ軍のエースパイロットで陸軍騎兵大尉。搭乗機のアルバトロスD.X一葉半戦闘機やフォッカーDr.T三葉戦闘機を真っ赤に塗っていたことから「レッド・バロン」と呼ばれていました。(当時のドイツの航空兵力は陸軍に所属し、パイロットも様々な兵科出身者がごっちゃ混でリヒトホーフェンは騎兵の出でした。)

ソッピース キャメル F.1

 このリヒトホーフェン大尉を撃墜したのがイギリス空軍第209中隊の「キャメル」に乗ったカナダ出身のアーサー・ロイ・ブラウン大尉です・・・と言われていますが、撃墜したのはオーストラリア軍の砲兵中隊、あるいは同機関銃中隊の兵士だったという話もあり、はっきりしないようです。みんなで手柄を争うのか、こういう場合の下手人は名乗り出る人が多いみたいですね。落とされた時の乗機はフォッカーDr.T(425/17)です。リヒトホーフェン、25歳の春でした。スヌーピーがキャメルに乗っているということは、つまり、ブラウン大尉のつもりなんでしょうか。
 ブラウン大尉の人物像はというと、映画での描き方をみると、1971年のアメリカ映画「レッド・バロン」でのブラウン大尉は礼儀知らずの(近頃の言い方で)ヤンキーな青年に描かれていてリヒトホーフェンを撃墜します(ブラウンの乗機は残念なことにキャメルではなくてS.E.5aになっていました)。2008年のドイツ映画「レッド・バロン」では、ブラウン大尉はヤンキーとは正反対、理性的で戦争を非難する、ものごとの分かった軍人として登場します。この映画ではリヒトホーフェンが撃墜されるシーンがなくて、だからブラウン大尉がリヒトホーフェンと対決することはなく、むしろ二人の間に友情が芽生えていました。
 というようなことを知っておいて、スヌーピーの飼い主はというと・・・、そうチャーリー・ブラウンです。なにか意図があるのかどうかは知りません。

 ぼくがお土産のお菓子の箱絵を見て思い出したのは、実はキャメルに乗ったスヌーピーじゃなくてP−40に乗ったスヌーピーでした。いつだったか、だいぶ前に東京で買ったP−40のプロファイル本で、スヌーピーがP−40のエースになったつもりでいる絵を見た覚えがありました。スヌーピーは閉所恐怖症なので寝る時も犬小屋の中ではなく屋根の上にあがって、しかも犬のくせに仰向けになって眠りますが、空中戦で活躍する戦闘機乗りになった夢を見ます。なぜ「ピーナッツ」の作者Charles Schulzがスヌーピーに空中戦をさせるのかというと、ぼくの勝手な想像ですが・・・これはたぶん駄洒落で・・・、つまり、スヌーピーが犬だからで・・・、アメリカでは空中戦を”ドッグファイト”といいます。

カーチス P−40 ウォーホーク
 P−40は第二次大戦のアメリカ陸軍の戦闘機です。生産機数の多さは半端じゃなくて14000機近くにもなり、ヨーロッパから、北アフリカ、アジア、太平洋、アリューシャンまで、あらゆる戦線で15もの国が使っています。中国ではアメリカ人のシェンノートがボランティアのパイロットを集めて編成した「フライング・タイガー」という飛行隊が、蒋介石の国民政府軍の青天白日旗を翼に付けて日本軍相手に戦っています。
 たくさん作られたせいか今でも飛行可能の機体が存在していて映画にもたびたび登場します。最近ではヒトラー暗殺計画を描いた「ワルキューレ」の冒頭、北アフリカでトム・クルーズが演ずるシュタウフェンベルク大佐が航空機からの攻撃を受けて負傷するシーンに、ドイツ国防軍第21装甲(機甲)師団の部隊を機銃掃射するイギリス空軍のキティホーク戦闘機の役で出演していました。(キティホークはP―40のD型以降の型にイギリス空軍がつけた名称。)

プラモ人
 こんな飛行機だからさぞかし優秀な戦闘機だったんだろうと思ったら・・・そうじゃないみたいで、どんな本を見ても褒められていることはありません。元々、P−36のエンジンを空冷式から液冷式に換装することで生まれた機体で、だから設計は古く、その取り換えたアリソンV−1710エンジンがあまり良くなかったみたいで、P−40の性能はパッとしなかったようです。
 でも、ぼくはこの飛行機がとても気に入っています。ぼくが褒められることもないパッとしない人間なのでなんとなく親しみがわくということもありますが、プラ模型にするととてもかっこ良く見える飛行機だからで、いろんな戦線で使われただけあって塗装のバリエーションが豊富なところも、ぼくのような飛行機のプラモ人には魅力的です。

 プラ模型のP−40も実機同様にキットの数が多く、ぼくはこれまでに10機以上作っていますが、たとえば「レベルRevell1/32のP−40E」はもう50年以上も前の古いキットで今でも手に入るのかどうか知りませんが、主翼端の削ぎ上がりが表現されていないという欠点以外は実によくできていて、エンジンやコクピットはもちろん、ビスや外板の継ぎ目などの表現がとても巧く、箱から出して手にしたときの感動が忘れられないという古くからのプラモ人も多いはずです。塗装の指定がウォルト・ディズニーのデザインによるという翼を持つ虎のイラストを胴体に描いた「フライング・タイガー」の機体になっていて、あとからベンガルの虎を機首に描いた「アリューシャン・タイガー(アリューシャンなのに、アムールトラじゃなくてベンガルトラだそうです。なぜかは知りません。)」の指定塗装のキットも発売され・・・、と、このまま書いていくと止まらなくなり、興奮しっぱなしになっては健康に良くないし、ここまで我慢して読んできた人がこれ以上は耐えられなくなるという事態も考えられるので、もう此処いらで止めときます。

レベル1/32P-40Eフライング・タイガー


 職場の子がUNIVERSAL STUDIOS JAPANのお土産に買ってきたお菓子の箱絵のサンタクロース姿のスヌーピーを見た先月末のその日から、スヌーピーがP−40のエースのつもりでいる絵が載っていた、確か渋谷の本屋で買った洋書を、家中ひっくり返して探していますが、見つけられないままクリスマスになりそうです。(2016年12月21日 メキラ・シンエモン


写真について
写真上 アイデア科学1/32 ソッピース キャメルF.1 イギリス空軍第65中隊Bフライト。アイデア科学は韓国の模型メーカーです。このキットは部品の構成などがホビークラフトカナダの1/32とそっくりですが細部のモールドは比べるとかなり落ちます。25年ぐらい前に当時住んでいたソウル市内の文房具屋で買いました。はっきり覚えていませんが3000ウォン(350円ぐらい)だったと思います。 文房具屋でプラ模型を買ったというのは特別なことじゃなくて、ぼくが子どものころは日本でも文房具屋で普通にハセガワやLSなどの国内メーカーのキットを売っていました。

写真中 ハセガワ1/72 カーチスP−40N アメリカ陸軍航空軍第49戦闘航空群第7戦闘飛行隊 ニューギニア1943年。背景にP−40の各型がちょっと写っています。左上キティホーク(P−40K レベル1/72)、左下P−40E「アリューシャン・タイガー」(ハセガワ1/72)、右下キティホーク(P−40E エアフィックス1/72)、中上P−40C「フライング・タイガー」(フロッグ1/72)、右上P−40C(アカデミー1/72)。ぼくの部屋の模型収納棚の様子です。

写真下 レベル1/32 カーチスP−40E「フライング・タイガー」。キットはグンゼから発売されていた国内製品です。このシリーズはほかにスーパーマリン スピットファイヤーMk.I、メッサーシュミットBf109Fがあり、いずれもP−40E同様のよいできでしたが、スピットファイヤーは主翼付根後縁の逆ガルの表現がなくフラットになっていたり、キャノピー可動部のバブルが低い欠点があり、Bf109Fは機首の下面に実機にはない顎が付いていました。その後続いて発売になった、このシリーズのキットは三菱A6M5零式艦上戦闘機52型甲、ホーカー ハリケーン、リパブリックP−47Dサンダーボルトなど、たくさんありましたが、ボートF4U−1コルセアがわりとよかったほかは、いずれもこの3機種には遠く及ばないできでした。(2016年12月22日 メキラ・シンエモン)

模型制作と写真:メキラ・シンエモン


後記
 探していたスヌーピーがP−40のエースのつもりでいる絵が載っていた本が出てきました。年末大掃除のときのことで、いかにも普通にありそうな話でおもしろくない見つかり方でした。本の名前は、
FAMOUS AIRCRAFT SERIES
The P-40 KITTYHAWK
by Ernest R.McDowell
(ARCO PUBLISHING COMPANY, INC. 219 Park Avenue Soutu,New York,N.Y.10003)
です。
 絵は、飛行帽にゴーグルを着けたスヌーピーが犬小屋の屋根の上に後足を伸ばして座りマフラーを風になびかせ両前足を前に突き出して飛行機を操縦するしぐさをしています。
 スヌーピーの頭の上の吹き出しには、
WE`RE SURROUNDED BY ME-109`S
GO, KITTYHAWK, GO !
メッサーシュミットに囲まれちゃった キティホーク、突撃!
とあり、犬小屋の下には、
HERE IS THE RETREAD WWI FLYING ACE
FLYING HIS TRUSTY P-40 OVER  THE
WESTERN DESERT IN WWII
第一次大戦の撃墜王 愛機P-40で第二次大戦の北アフリカ(西部戦線の砂漠)の空をいく
と書いてあります。
 さらにご丁寧に犬小屋には、右上がりの斜めに3列合計13発の弾痕が付いています。第二次大戦の北アフリカにおけるドイツ空軍のエースで「アフリカの星」と呼ばれたハンス・マルセーユ中尉のメッサーシュミットBf109Fにでも撃たれたんでしょうか。(2016年12月31日 メキラ・シンエモン)

訂正
ソッピース・キャメルF.1の写真の解説を一部訂正しました。以前は「レベルの1/28とそっくり」と書いていたところを「ホビークラフトカナダの1/32とそっくり」に書き換えてあります。(2020年6月25日 メキラ・シンエモン)


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