12  尾口村

若葉の頃の手取湖

 白山麓の景観を形作っている要素の一つとしてダムがあります。手取川とその支流にはたくさんのダムが作られていますが、ダムによってできた湖が山と渓流がどこまでも続くという風景を、そこだけ、山と森と湖、という変化のあるものにしています。その典型が尾口村から白峰村にかけての手取川にある手取川ダムとその人工湖です。
 手取川ダムの人工湖を手取湖といいます。ここは季節によらず景色がとても良いところです。初夏の青葉がすがすがしく、秋の紅葉も美しいのですが、五月上旬の雪解けでダムの貯水量が多くなり、周囲の山々が若葉に覆われはじめた頃の風景が、一番すばらしいように思います。ゴールデンウィークの良く晴れた日に、手取湖へ行ってみました。

ツバメシジミ 鶴来から白峰に向けて、国道157号線を走っていきます。新緑の白山麓は、遠くの山にはまだ雪が残っていて斑模様になっていますが、近くの山は茂り始めた若葉がきわだって、ところどころ樹冠をうっすらと被って白い花が咲いています。山腹には点々と桜が咲いているところもあります。低地では、ナズナ、カキドオシ、オオイヌノフグリ、アオイスミレ、タンポポなどが可憐な花を咲かせ、その上をツバメシジミ(写真)がふらふらと低く飛んでいて、のどかなものです。
手取湖 手取川ダムに着いてみると、さすがに多くの人が訪れています。ダムの横にある展示館や食堂、売店には多くの人がはいり、駐車場は車がひしめいて動きがとれないほどです。ここから見る湖は、広々としてダムの大きさを実感させます。湖面は波がなく鏡のようになめらかですが、水はオリーブ色で、周りの山の影をうすく映しています。左の写真は展示館の辺りから見た手取湖です。この風景を背景に、楽しそうに写真を撮っている家族連れの姿がたくさん見えました。あまりに人が多いので、もうちょっと先まで行ってみました。
手取湖 大小五つほどのトンネルを通り抜けると、南北に細長い湖のほぼ真中辺りに橋があります。その橋を渡って湖畔に降りたところにあるドライブインから、手取湖の美しい姿を見ることができます。山と湖と空が美しく調和して、今できたばかりのようにきれいです。しかも、展示館の方ほどには混雑しないので、手取湖の景色を静かに楽しむことができます。ただ、ドライブインのまわりがあまり整備されていないのがちょっと残念です。右の写真はドライブイン裏手の崖の上から手取湖を撮ったものです。

 冬は雪が降り積もる北陸に住む我々には、新緑の頃が一年中で一番嬉しい時です。雪が解けたあとの山々に木々の若葉が茂りはじめる様子は、春が来た喜びを実感させるもので、毎年見ているにもかかわらず、初めて見るようなまぶしさで目に映ります。何か抑えられていたものから解き放たれたような気がして心も軽くなります。
 雪が解けて、山が若葉で覆われはじめると心がうきうきして嬉しくなり、喜びすら感ずるというのは、冬に雪の降らない地方の人々には、分からないことでしょうね。(平成12年5月13日 メキラ・シンエモン)


桑島 3月下旬 桑島 5月上旬

 左の二枚の写真は、桑島の恐竜化石壁の対岸から手取湖の白峰側(ダムとは反対側)の端を写したものです。左は春までもう少しという三月下旬、右は春まっさかりの五月上旬です。ご覧の通り雪解けの前と後では水量が随分と違っています。









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