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約束とちがったオオキンカメムシ
先日いつものウォーキングからの帰りでした。大乗寺丘陵公園の下に広がる畑がそろそろ終わりもう少し下ると山側環状道路にでるという辺りでうしろからぶーんという羽音がしたと思ったら頭をかすめるように追い越して虫が飛んでいきます。それが黄色に黒の虎縞ででも蜂にしては大きくて太っていてずいぶん重そうにやっと飛んでいる感じでした。あれっもしかしてオオキンカメムシ、と思って見ているとうまい具合に目の前のアカメガシワの葉に止まるじゃないですか。葉の上をせわしなく動いています。去年遊歩道脇で見つけた飛びそうで飛ばないオオキンカメムよりよほど元気です。
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2024年6月12日 |
ウッソだろこんなところで約束してないぞ、と驚いている場合ではないので急いで肩から掛けたカバンからカメラを出して写真を撮りました。カメムシは右を向いたり左を向いたり顔を見せたりお尻を見せたりしていましたがやっと小楯板(しょうじゅんばん)に格納した翅をまた展張すると、悪いけどいつまでもこうしてはおられんのだ、というように慌ただしく飛んで行ってしまいました。その間せいぜい20秒ほどだったでしょう。
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2時間歩いてきて家まであと10分ぐらいかというところで後ろから飛んで来て目の前の木にオオキンカメムシが止まった。家を出るのが少し早くても遅くても途中でトイレに行ったりしていても会えなかった。いやそうではないかもしれない、カメムシはぼくが下りて来るのを草むらで待っていたんです。おおっ来た、やっと戻って来よったか、遅いやないかおまえさんが登っていくの見かけたさかい降りてきたらちょっと顔見せたろうか思てさいぜんからずっと待っとったんや。というわけなんですよ、きっとそうにちがいない、なんとかわいいカメムシじゃないですか。っなアホな、カメムシがそんなことするわけないじゃないか・・・、とは、ぼくは思いません。
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もう一遍また見てみたいなといつも思っているからこういうことが起きるんだとぼくは思っています。気持ちが呼び寄せるとまでは言いませんが気持ちがなければ見えるものも見えない。見えないものはなお見えない。気持ちがあってそこに意識が向くから見逃さずに見えるということはあると思います。ぼくは別に虫をあちこち探し回ったりはしません。ただ、そろそろ暑くなりはじめたし去年見たオオキンカメムシにまた出会えるかもしれない、と思って、毎朝のウォーキングで歩く遊歩道の去年カメムシを見つけた辺りでちょっと速度を落としていました。でも見つけたのは違う場所だった。約束が違ったんですが意識が向いていればこそ追い越すように飛んで行った虫に注意がいきました。
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はじめてオオキンカメムシを見つけたのは去年の6月で夏至の日でした。今年の夏至はもうすぐです。一年をおいて近い場所でまた見たというのはこの辺りで繁殖しているようだと考えるのが自然です。あの重そうに飛んでいる様子を見ればそんなに遠くから飛んで来たとも思えません。でもそれはアブラギリで繁殖し暖かい海辺で越冬するという図鑑の解説に反します。これも気候変動のあらわれだろうか。いずれにしても去年の発見はなにかの間違いでたまたまそこにいたのではなかったということは言えそうです。
オオキンカメムシが飛んで行った先には小さな池の畔に東屋まであるちょっとした公園と小学校があります。生えている木の種類は多くて昆虫もたくさん棲んでいそうです。それならその公園まですぐ近くだしちょっと行って探してみようかと思うのかというとぼくにはそこまでの熱意はないので、虫が思わぬところにいるのを偶然見つけるのがおもしろいのだ、と居直っておきます。 2024年6月14日とらもとしんいち(メキラ・シンエモン)
写真:とらもとしんいち
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