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夏と冬の間で

 今日は「スポーツの日」です。さっきまで雨が降っていたのでお昼を過ぎても気温は上がらず最高気温は平年より低くなりそうです。今20度ほどですがちょっと寒いと思うのは暑さに慣れた体が気温を実際より低く感じてしまうのでしょうか。熱中症指数は「ほぼ安全」でした。ほぼ安全だって、この気温でほぼ安全なら安全になるのはいつのこと、と思ったら「ほぼ安全」が一番下で「安全」はないそうです。きのうは24節気の「寒露(かんろ)」で白山の初冠雪がありました。平年より13日去年より17日早かったといいます。初冠雪はきのうでも初雪はそれより二日ほど前に降っています。初冠雪は麓の測候所からの目視という条件付きなんです。それが2702メートルの高山だったとしても雪が積もったと聞いてどこか納得いかない気持ちです。今日は長袖ですが三日前までは10月だというのに半袖でした。いつのころからか季節のうつろいにぼくらの気分がついていかなくなっています。それなら今年の夏と冬の間で思ったことを書いておくことにします。


"夏と冬の間で"だなんて変に気取った言い方しないで素直に秋と言えばいいのに。それに冬までにはまだまだ間がある、秋はこれからが本番でしょう。
秋か、秋ね、これが秋かな。今の子どもはかわいそうです。ぼくらはちいさい秋を知っていますが、小学生以下の子どもらはちいさい秋を知らないままおとなになります。
またそんな気取った言い方して、そういうのはその顔にはちっとも似合わないんだから・・・。

夏と冬の間でと言っても家に居ても外へ出ても暑いか暑くないかだけの日常に思うことなんてなにもないからシーンは休日ごとのウォーキングにします。
そうくると思った。それもどうせまた花か昆虫なんでしょう。

そうと決まれば次は"間"をいつからいつまでにするかです。いつまでは今日まででいいとして、いつからは・・・。
9月1日からにしたら、まだ暑かったけど区切りがいいから。
なるほど、でも、さあ9月になったと一気呵成に夏を押入に仕舞ってしまうのはどうだろう、ぼくらの日々の生活には都合がよくても、ウォーキングで出遭う植物でも動物でも気象にあわせて生きている自然界の生き物にはそれは無意味じゃないかな。
それじゃいつからにする。
少し前からにしようか。
ええっ、後ろに持って行くんじゃなくて真夏と変わらなかった8月中からにするって言うの。

8月22日
この虫は知らない、シャクだろうかヒトリだろうか、蛾には違いないと思うけど・・・。桜の木に見慣れない虫がいました。帰って図鑑を調べましたがわかりません。
子ども向けの薄っぺらな図鑑だったんじゃないの。でも桜餅みたいなピンク色に黒の水玉模様だなんてちょっとオシャレ。


8月27日
遊歩道の舗装でキムネクマバチ(黄胸熊蜂)が丸くなって死んでいました。寿命でしょうね。
温泉宿の玄関の屋根で死んでいれば小説だね。
よく知ってるね。でもあれは虎斑(とらふ)の蜂だよ、種類がまったく違う。
蜂は蜂じゃない、だれも見分けがつかない蜂の種類なんかどうでもよくて蜂が死んでいたという事実が重要なんだから。
なるほどね。そうですか。しかし黄色と黒の縞々の蜂ならスズメバチをはじめたくさんいる。この作家は見えるように書くのが信条だったらしいけど調べて書くのは苦手だったとも聞くから昆虫には詳しくなかったのかな。


帰り道でオスのキリギリスが草むらから出てコメヒシバの茎に登っていました。そろそろ寒くなるしアリのところへでも行くのかな。
おもしろくない、イソップ童話にかぶせたつもりらしいけど、いい年してバカじゃないの。
ぼくは、このキリギリスも気温が下がれば寿命が尽きてアリのエサになるのかな、って言っているんじゃないか。
わざと思わせたね、言わせたね、ずるいよ。


8月28日
山頂付近の草むらでヤマトシジミとメスのモンキチョウ、サトジガバチをみました。

ヤマトシジミ
モンキチョウ♀
サトジガバチ


8月29日
遊歩道を一旦登りきったところでヤブガラシの蜜を吸うモンキアゲハをみました。


8月31日
まだ花を残すヒメムカシヨモギにいたハラビロカマキリのメスに睨まれました。


ちょっと、ウォーキングは休日ごとじゃなかったの、これじゃほぼ毎日じゃない、ちゃんと仕事行ってるの。
もう年だからね。コロナ前の半分ほどに減らしています。

9月2日
林の淵の地面にミンミンゼミがいました。でも動かない。死んでいるのか。そっと触ると、あっ、脚が動いた。オスでしたが衰弱してもう鳴く力はないみたいです。
今年は夏が暑くて長かったけど夏の象徴みたいな蝉はいつも通りに9月中旬にはピタリ鳴き止んでいたね。
蝉は知っての通り幼虫で6年間も土の中にいて7年目に地上に出て羽化しますが、親虫に6年後の夏がこんなに長くなると予想できるわけがないからその分の卵まで産むはずもない。いやたとえ卵をたくさん産んでみてもみんな同じころに羽化するのならむしろ生活と繁殖の競争が激しくなるだけでいいことひとつもないか。
でも蝉を狙う猫は数が増えたと喜ぶね。


9月9日
茶色のバッタが草むらからいきなり飛んでぼくから少し離れた道の真ん中に降りました。トノサマバッタか。ゆっくり近づいて見るとクルマバッタでした。オスみたいですが褐色のクルマバッタとはちょっと珍しい。


山を下りて来ると空き地に生えたテンニンソウでオオセイボウが蜜を吸っていました。全身が青色で金属のように輝く美しい蜂です。
これが蜂なの、きれいな蜂。


9月19日
ぼくの行く手前方の遊歩道の真ん中にトノサマバッタが見えます。小さいからオスのようですが近づいても逃げないのは度胸がいいのかそれとも鈍いのか。
逃げなかったからこうやって写真に撮られて全世界の人に見てもらえるんでしょう。
全世界の人にって・・・こんなHPにそれは大袈裟すぎるよ、理屈としてはそうなるけど・・・。
なんでもいいじゃない、HPに載せてもらって運が良いバッタだね。


そんなことで運が良いと言うのなら、宝くじで一等に当たったほどに運が良いスズメバチがいました。ジョロウグモの巣に掛かったコガタスズメバチがいたんです。
ちょっと、蜘蛛の巣に囚われてどこが運が良いのよ。えっ、続きがある。
オスの蜘蛛が近づいてきてスズメバチは必死にもがいていますが絡まった糸はどうしてもはずれません。これはもうダメだな。
ダメだなって、見てないで助けてあげたらいいじゃない。
それはできない相談だね、自然の生き物の営みに手を出してはいけない。蜘蛛も生きるためにやっている。
かわいそうじゃないの、わかったようなこと言ってカッコつけてる場合じゃないでしょう、蜘蛛の巣にはまた獲物が掛かるじゃない。
だからこの蜂は運が良いとさっき言ったでしょ、写真を撮っているぼくのヒジが蜘蛛の巣に触ってしまったみたいで、そのとき巣が揺れたからそのはずみにスズメバチは罠から解放されて飛んでいきました。
本当はわざとやったんじゃないの・・・。
それは断じてない。コガタスズメバチは礼も言わずに飛んで行った。
蜂がお礼なんか言うわけないじゃない。やっぱりあやしい・・・。


家に帰って来ると庭のヤブランにモンシロチョウがとまっていました。オスのようです。今年はヤブランがたくさん咲きました。


9月25日
アキアカネの連結しているオスとメス、ヤマトシリアゲ、ミズキの葉に並んでとまるアオマツムシのオスとメスをみました。
アキアカネって赤とんぼでしょう。そう言えば、赤とんぼ羽を取ったらアブラムシ・・・ってだれかが歌っていた。どこがおもしろいのか全然わからないけどね。
きみの年はいくつなんだい。
まだ46億歳。

ヤマトシリアゲって聞いたことない、アオマツムシは聞いたことあるような・・・。
ヤマトシリアゲはシリアゲムシ目シリアゲムシ科の虫でカゲロウみたいな翅を持ち細くて長い口は下を向きお尻は跳ね上がるという奇妙な姿をしています。

アオマツムシはマツムシになんとなく似た外形の外来種で、でも鳴き声は似ても似つかず夏の間中夜になると街路樹の上でリーリーリーと大きな声で鳴きます。
そうなの、あの木の上から降ってくるうるさい鳴き声の主はアオマツムシっていうのか。


9月27日
アキノノゲシの花でシロスジヒゲナガハナバチのメスがせっせと花粉を集めていました。


10月7日
山側環状道路を歩いていたらウラナミシジミが今年は遅く咲き始めたミゾソバの蜜を吸っていました。


10月8日
彼岸花は、今年はお彼岸にはちょっと間に合わなかったみたいです。いまごろになって咲いています。
夏目漱石だね。
「彼岸過迄」と言いたいようだけどいったいどういう文脈なんだ、いや、計画通りに進行しかねるという点でなら・・・かなり苦しいけどOKか、でも「彼岸過迄」の彼岸は春のお彼岸だったと思う。


ミズキの重なった葉の陰で三匹のエサキモンキツノカメムシが身を寄せ合っています。一匹の幼虫を二匹の成虫が両側から挟むようにしていました。ほほえましい光景です。普通に生まれた成虫がずいぶん遅れて生まれてきた弟を寒さから守っているんでしょう。それとも幼虫はなにかわけがあって大きくなれなかったのか。上の葉にはもう一匹成虫がいました。見張りかな。


そして本日 10月9日
午後になって雨が止むと前庭のキンモクセイにキジバトが来ました。茂った葉のなかに潜っています。キジバトが来たのは7月以来です。二羽いるみたいです。暫くして一羽が電線に移ったのでよく見ると、あの弟だ、目がそっくりです。一緒にいるのは兄じゃないな、さてはつれあいかな。キンモクセイの横の松の木を剪定中にキジバトが卵をふたつ産んでいるのを見つけてそっとしておいたら卵は二個とも孵化して育った雛が二羽とも無事に巣立っていったのは去年の10月下旬のことでした。
戻ってくるのは帰巣本能だね。
本能っていうけどその言葉は生き物がなぜそうするのかがよくわからないときに人が本能的に使うんだよ。キジバトの行動範囲は狭くて自分が生まれた木からそう遠くへは行かない。生まれた木がどうなっているのかたまに見たくなってやってくるんじゃないのかな。

キジバトがキンモクセイに潜ったのは巣をかけるための偵察だったのかもしれません。松は去年枝をずいぶんと伐ってしまったからもう卵を隠せない。キンモクセイには昔の巣が残っています。でもそれは子育てに失敗した鳩の巣です。その巣の卵は狡いカラスに取られてしまいました。ぼくはそれを目撃してしまい頗るショックでした。キンモクセイは枝も葉も卵と雛を隠蔽するにはスカスカすぎて密度が不十分なんです。


 今年キンモクセイは花が遅くてまだ咲いていません。やっぱりいつまでも暑かったからなんでしょう。そう言えば名付け親はあの牧野富太郎博士だとか。よく見るとちいさな蕾は膨らんでいます。甘酸っぱい香りの橙色の花が終わったら二年ぶりに剪定をしようと思っているのですが、今年もやらないでおこうかな。
 鳩のためにやめるの。キンモクセイは巣には適さないんでしょう。それに奥さんはどうするの、やらないとまた叱られるよ。えっ、慣れてるの。 2023年10月9日 虎本伸一(メキラ・シンエモン)




写真:虎本伸一

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