2-128-KN56

暑さ寒さも彼岸までと言いますが

 立秋を過ぎてから秋分の日までの夏のような暑さを残暑と言っています。では秋分を過ぎてもまだ夏のような暑さだったらどうなるんでしょう、なんと言えばいい。これは時候のあいさつの話だから普通に会話するときならそのまま使ってもいいのでは・・・。えっ、そんな使い方は間違い。残暑はそもそもそこまで暑さが長く続くと想定していません。


 小中高の新学期が始まって登校中のこどもらがぼくの横で信号待ちをしていても、そこへ山から下りてきたアキアカネが頭をかすめて低空で目の前を飛んで行っても、ぼくの気分は夏のままです。9月も半ばを過ぎジリジリジリといかにも暑そうで気だるそうなアブラゼミの鳴き声が聞こえなくなり、ああ夏は終わったんだな、と思い、コロコロコロとどこか寂し気で悲しそうなエンマコオロギの鳴き声に、もう秋だね、ときのう思ってみても今日は季節が戻って真夏日です。青い空に湧き立つ白い積乱雲。遠くで聞こえる雷鳴。いきなり降り出してアスファルトで跳ね返る激しい雨。あっと言う間に池になる家の庭。夏の風景です。心も体も納得しないままお彼岸に入りました。「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが何年か後には死語になるんじゃないのかな。

 この夏、ぼくの休日毎の野田山ウォーキングは"夜明けとともに"が復活していました。

 夜明けとともに家を出る爽やかな早朝の野田山ウォーキングをぼくが諦めたのは新型コロナが流行り出したおととしのことでそれは直接には「ラジオ爺さん」の出現がその原因でした。去年もずっとそうしていたのに日が昇ってからのウォーキングにはこの夏の暑さは厳しすぎました。しかたなく夜明けとともに家を出る早朝ウォーキングの復活です。ラジオ爺さんとの遭遇は我慢するしかないかと覚悟を決めて・・・いたんですが、それがちょっと違ったというのは大音響でラジオを鳴らしていた爺さんや婆さんとの遭遇はなくて小さく鳴らしている数名のお年寄りとすれ違います。それなら「ラジオ小爺さん」。早朝の静寂を切り裂いても平気な、小鳥のさえずりにもニイニイゼミの乾いた鳴き声にも鈍感なほとんど感性が停止しているのか元々持ち合わせていないのか、とつい自分の気分が下がるだけで意味のない悪口雑言が口から出そうになって喉の奥で留める努力のいる、あの迷惑老人たちはどうなったのかというようなことは考えません。

 良かったじゃないと言われればまあそうです。遥か向こうから聞こえてくる雑音はなくなりましたが、すぐ近くにくるまでわからずにすれ違いざまにラジオが聞こえるというのは、これはこれで問題でというのはやはり不快であることには変わりないのと、遠くから微かにでも聞こえていると回避運動がいくらかは可能だったからです。しかしそんなことに気を揉んで歩いていてはちっとも楽しくないから気にしないのが一番です。こういう感情は自ら増幅する作用が備わっているらしく一旦その罠に嵌ってしまうともう抜け出せなくなります。なんでもないことに激高する人にならないうちに草花を観て虫を探して気をそらします。草の葉に載る朝露や羽化したばかりのニイニイゼミ。

羽化したばかりのニイニイゼミ 2023年7月26日 野田山

 早朝のウォーキングを復活させても日が昇ってからのウォーキングをやめたわけではありません。午後の一番暑い時間帯に歩くことはしません。午前中に限ります。それはラジオ小爺さんがやはり気になるからかと言えば、それよりも明るくならないと咲かない花があるし薄暗いうちは活動が控えめな虫がいるみたいだからです。ちなみに暑さに体が慣れるということはやはりあるようで、近ごろは気温30度をちょっと超えるぐらいでは暑いとは思わないようになっています。それって慣れたんじゃなくて鈍感になっているだけなんじゃないの。いずれにしても暑さに用心しないといけないのは言うまでもないことで、だれも危ないと思って危ないことをする人はいません。熱中症になる人は用心のうえで大丈夫だと確信をもっていて熱中症になるようです。


 大乗寺丘陵公園の遊歩道を歩いている人のなかにこのごろは犬の散歩がかなりいます。自分の運動にならないことは知っているはずだから愛犬への奉仕。帽子を目深に被り衣服で全身をすっぽり顔まで覆っている老婦人が多く見られます。これ以上シミを増やしたくない。水筒を携行している人も結構います。水分の補給が肝要。ぼくはと言えばトレッキングシューズを履いてサングラスをかけ半袖ポロシャツに短パンのいで立ちで、タオルと大小2台のカメラを入れたバッグを右肩から斜めに下げて斜面は直登し道は早足で歩きます。たった二時間のウォーキングです。太陽の光を肌で受け止め水分補給は歩く前と歩いた後に行います。
 明日あたりから気温が少し下がり30度にはとどかないようです。あるいは相対的だったとしても、暑さ寒さも彼岸まで。 2023年9月21日 虎本伸一(メキラ・シンエモン)






写真:虎本伸一


 ホーム 目次 前のページ 次のページ

 ご意見ご感想などをお聞かせください。メールはこちらへお寄せください。お待ちしています。