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オオキンカメムシを見つけました

 野田山でいつものウォーキング途中にオオキンカメムシを見つけました。近道をしようと斜面を直登(ジグザグに登らず直線的に登る)していたらヒユの葉に大型で派手な色の虫がとまっていました。それがオオキンカメムシであることがすぐにわかって目を疑ったというのは標本ではない生きているこの虫をこの目で見るのは初めてだったからで、それが飼育施設ではない自然のなかだったから感動してしまって嬉しくなって前から後から左から右から上から下から斜面を滑り落ちそうになる足を踏ん張って堪えて30分くらい眺めていました。30分は長過ぎるんじゃない。いえね、それが翅を広げようとするもんだから飛んでいくまで見届けようと思っていたら翅を出したり引っ込めたりグズグズしてなかなか飛ばないまま時間が過ぎて時計を見れば、ああもうこんな時間か、おいカメムシこんなところでだれかに捕まっちゃダメだよ、と言い残してその場を離れたんです。珍しいカメムシのようだけどカメムシはカメムシやっぱり臭いんじゃないの。さあ、わかりません、触っていないので。ぼくは草花でも昆虫でも写真は撮っても採集はしない主義です。昆虫は人間の側にちょっかいを出す気がまったくなければ普通は攻撃して来ないものです。蚊は積極的に刺してきますが刺すのはメス特に交尾後のメスでそれは産卵のための栄養補給だといいます。



虫とは
 ぼくのような昆虫好きは世の中に普通にいますが虫嫌いという人もやはり世の中に普通にいます。毎年一緒に仏像巡りをしているミキオ君も虫嫌いだったことが近ごろ発覚いや判明しました。前回のジョウカイボンとナミテントウの記事にミキオ君からどんなコメントがくるかと楽しみに待っていたら、虫は大嫌いだから今回はまともに読まない、いや、読めない、と言ってきたんです。ショックでしたねというのは「通りがかりの者です」を毎回欠かさず読んでくれていることが確認できる唯一の篤実な読者です。今回も虫の話だから2回続けて彼には読んでもらえないのか・・・。彼は、足多い奴らのあの腹がとてつもなく嫌悪なんだ、と言います。ぼくはむしろ足の無いのがとてつもなく苦手です。
 ミキオ君にとって虫とは「足が多い奴」でしたが前回ちょっと登場させた「虫づくし」で別役実さんは「虫とは・・・」という虫の定義をしつこく書いていました。「虫とは小さいものである」とか「虫とは長いものである」とかいろいろ定義を考え否定しまた考えてを繰り返して最後は「虫は虫である」に落ち着いていたようです。"ようです"というのははっきり憶えていないからで、それなら本はまだ手元にあるのなら読み返せばいいのではないかと言われると、そこまでする価値のある問題とも思えずそこまでする価値がある問題だったとしてもぼくにそこまでする熱意はないので"ようです"になってしまいます。しかし「虫は虫である」とはどこか達観した響きがあります。でもそれならいっそのこと「虫は虫ではない故に虫である」と金剛般若経のロジックにしておけば仏教哲学的でなんとなく意味深長に見えたのに、別役さん、ちょっと残念でした。

オオキンカメムシ
 カメムシは臭い虫というイメージでしょう、へっぴり虫とかへこき虫とか言って。でも日本で一番美しい昆虫はアカスジキンカメムシというキンカメムシ科のカメムシです。オオキンカメムシもまたキンカメムシ科でその名の如く最大級のカメムシで3センチほどもあります。しかも大きさだけではない日本の昆虫とは思えないようなどこかの熱帯雨林にでもいそうな華やかな色をしています。朱色の地に黒の大きめの斑紋がいくつもあって小楯板の真ん中にハート形のそれが際立つという派手な出で立ちです。小楯板(しょうじゅんばん)というのはカメムシ類で前翅(まえばね)の付け根にある逆三角の板のことをこう呼んでいてキンカメムシ科のカメムシではそれが極端に大きく背中全体を覆っています。図鑑によると幼虫が育つ木はアブラギリだそうですが野田山では見かけません。以前この場所から少し離れたところのマルバノキで実に取りついたアカスジキンカメムシの幼虫を見つけたことがあって上にも書いたように同じキンカメムシ科ですがでも食べ物は異なります。アカスジキンカメムシはミズキで繁殖します。幼虫がいたマルバノキの横には確かにミズキがあります。とにかく近くに幼虫が育つ木がないとすると・・・どこか遠くから飛んできたのでしょうか。

オオキンカメムシ
2023年6月21日 金沢市郊外 野田山


アカスジキンカメムシ
 アカスジキンカメムシの幼虫がいれば、それならここで繁殖しているはずだからきっと成虫もいる、日本一美しいカメムシをこの目で見てみたい、とだれもが思うでしょう。爾来その場所を通るたびに注意して見ていますが未だに見つけられません。どころか幼虫を見たのも今に至るまであの時がただの一度です。やなことでもあってどこかへ引っ越したのかな・・・、とは思わず今もときどきマルバノキの横を通るコースを歩きます。探さないのかって、ぼくは花でも虫でも徹底して探し回るということはしません。虫好きなんだろう情熱はないのかと追及されても運動が目的のウォーキングですから、なんであれその目的から外れることはしない主義です。では改めて探索目的で出かける気はないのかと訊かれればまったくないのでやはり情熱がないんでしょう。花も虫もたまたま見かけた彼らを愛でています。

マルバノキの実にいるアカスジキンカメムシの幼虫
2014年10月29日 野田山



 ついでだからウォーキング途中で見かけたカメムシの写真をいくつか載せます。ええっ、いいよいいよ、カメムシの写真なんか見なくてもいい。まあそう言わずに、写真だから臭いはしません。きれいな色彩のカメムシもけっこういるし、それにカメムシはよく見るとどこかひょうきんでおもしろい姿をしています。ぼくはカメムシファンかもしれません。

アカスジカメムシ
2022年8月29日 野田山


エサキモンキツノカメムシ
左 2014年10月29日 野田山  右 2023年5月22日 野田山


キバラヘリカメムシ
左 幼虫と成虫 2018年10月22日 木はマユミ 野田山  右 2022年9月30日 木はマユミ 野田山


キマダラカメムシ
左 2022年8月1日 木は桜 野田山  右 2014年9月19日 木はナツメ 自宅庭


チャバネアオカメムシ
2022年9月30日 木は桜 野田山


ハサミツノカメムシ ♀
2019年7月5日 木は桜 野田山


ヒメホシカメムシ
左 2023年5月5日 野田山  右 2023年5月22日 花はガマズミ 野田山


ホシハラビロカメムシ
2020年8月9日 野田山


イチモンジカメムシ ♀
2022年8月29日 野田山
クモヘリカメムシ
2019年10月3日 花はエノコログサ 野田山


 クチブトカメムシの幼虫
2023年6月23日 花はヒメジオン 野田山
ブチヒゲカメムシ
2022年4月13日 野田山


マツヘリカメムシ
2022年5月17日 野田山
アカシマサシガメ
2022年4月29日 草はホウチャクソウ 野田山


シマサシガメ
2022年5月16日 野田山


たぶんこれもカメムシだと思います
2023年6月15日 野田山

 上からアカスジカメムシ、エサキモンキツノカメムシ、キハラヘリカメムシ、キマダラカメムシ、チャバネアオカメムシ、ハサミツノカメムシのメス、ヒメホシカメムシ、ホシハラビロカメムシ、イチモンジカメムシのメス、クモヘリカメムシ、クチブトカメムシの幼虫、ブチヒゲカメムシ、マツヘリカメムシ、アカシマサシガメ、シマサシガメの以上15種で科別に分類はしてありません。日本のカメムシは1500種だそうです。だから極々ほんの一部です。カメムシの名前についてはぼくの識別が間違っている可能性はあります。それから一番下の虫はこれもたぶんカメムシなんじゃないかなと思います。 2023年6月25日 メキラ・シンエモン(虎本伸一)



写真:虎本伸一


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