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二羽のキジバト 雛

 あれから18日が経ちました。前庭の松のキジバト夫婦の巣では卵がふたつとも孵化してかわいい雛たちが元気に育っています。十数年前のキンモクセイの巣ではカラスに卵を取られてしまったから今回は雛が誕生してまずは良かった、良かった。


雛見ゆ
 巣に雛が生まれているのを見つけたのはおとといの朝でした。応接間のガラス戸越しに巣を見上げると綿の塊みたいなものが見えて、なんだろうきのうまではなかったけど、と思って見ていたらそれが動きます。雛か、と思って見続けると綿の塊は上にあがっていって、あああっ、やっぱり・・・、雛の目がこっちを見ていました。いや、そういうふうに見えました。雛が見ていたかどうかは雛に訊かないとわからないのですが下から見上げているぼくの姿がその目に映っていたはずです。ここからでは雛は見えないだろうと思っていたから感動しました。孵化した直後ではなく五日かもっと経っているんだろうと思いましたというのは、五日ほど前から巣に親鳩の姿が見えないことが度々あってそれがその見えない時間がだんだんに長くなっていって先おとといにはまったく見えなくなって、雛が生まれた・・・もう孵ってもいいころだし、と思ったり、抱卵を放棄したのか・・・ここんとこ寒かったから卵が死んだ、と思ったりしていました。巣を覗こうか、いやいや止めておこう、もうすこし待ってそれでも親鳩の姿が見えないようなら・・・、と我慢していました。そしたら雛が見えた。孵化直後は小さくて見えなかったのが成長して下から見上げて見えるほどまでになっていたんです。女房にも教えて一緒に見上げれば雛もぼくらを見下ろします。

巣の中のキジバトの雛 2022年10月13日
上と同じキジバトの雛 目をつぶっています 2022年10月13日

鳩の子育て
 鳩の仲間は雛に餌を運びません。親鳩の姿が消えたとき心配になって調べたんです。親が体内で作るピジョンミルクというものを雛に与えます。ピジョンミルクは雄も雌も作れます。それで一年中しかも何回も繁殖できます。若鳩も孵化から半年で繁殖できるようになります。ピジョンミルクははじめのうちは頻繁に与えやがて一日一回になるみたいです。雛が大きくなると自分で捕食に行くようになりでもまだ巣立ちではなくそれをしばらく続けた後に巣立ちするそうです。雛が自分で餌を取りに行くようになれば親鳩はもう来ないんでしょう。

もうひとつの卵
 おととい発見した雛は一羽ですが、雛が見える応接間は実は奇跡のような場所でした。キジバトはなかなか利口です。巣は外からは絶対に見えないところにあります。木の下のどこに立って見上げてみても二階の窓から見下ろしても巣は見えません。応接間のガラス戸越しに決まった場所から非常に狭い角度で見上げて抱卵中の親鳩が見えたことでそこが巣だとわかりました。きっと松の周囲を念入りに偵察して絶対に見えない場所を見つけて巣をかけたのでしょう。でも応接間は偵察できなかった。
 卵が二個だったのに雛が一羽しか見えないと、もう一羽は・・・、とだれでもきっと思うでしょう。そして、もうひとつの卵も孵っているんだけど雛は見えないところにいるんだ、と希望的にだれでもきっと考えるはずです。しかし希望的というのはこの場合は不適切で望めばどうにかなるという話ではありません。もうひとつの卵が孵化しているかどうかはすでに決まっています。母鳩は卵を一度に二個産むのではなくわけて産むというからあるいはもうひとつはこれから孵化するのかもしれません。と思っていたら翌日もう一羽の雛を見ました。ほんとに、同じ雛を見ていたんじゃないの・・・。いいえ、たしかにそれがもう一羽の雛だったというのは二羽が一緒に見えたんです。兄弟のツーショット。だたし姿かたちはもちろん大きさも同じなのでどっちがどっちかはわかりませんでした。母鳩がわけて産むふたつの卵が孵るのはほぼ同時のようです。

ボケていますが二羽いるのがわかると思います 2022年10月14日

ピジョンミルク
 今日の朝、親鳩が巣に来たのを見ました。二階のぼくの部屋からでしたが、四六時中見張っているわけではないから偶然です。これは授乳に来たな、ピジョンミルクというのだから授乳でしょう、と思ってカメラを持って急いで階下へ降り応接間に行くと親鳩が二羽の雛に授乳していました。もちろん口移し、いや嘴移しです。それが、雛が大きい、もう翼ができていて羽ばたきながら嘴を親鳩の口のなかに差し入れていました。雛の成長はすこぶる早いようです。もう親鳩の半分ほどになっていて翼の模様は親とほぼ同じでした。もうすぐ飛べるようになるのかもしれません。ピジョンミルクはとても栄養価が高いみたいです。ぼくが見ているのに気付いたのか親鳩は早々に授乳を終えると鳥が飛び立つようにいなくなりました。ああ、鳥だった・・・。でもまた来てくれるだろうか。

ピジョンミルクを二羽の雛に与える親鳩 2022年10月15日
雛の羽根はもう親とほとんど同じ模様です 2022年10月15日



 巣立ちは孵化から半月ほどだといいます。なら、あと十日ほど、いやあの大きさなら一週間・・・、まず親が来なくなり次に兄弟が出て行って前庭のキジバト一家はきっと知らないうちにすっかりいなくなるんでしょう。(2022年10月15日 メキラ・シンエモン)


写真撮影:メキラ・シンエモン



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