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ぼくだけのミニチュア四天王像 創作フィギュアのこと

 フィギュアなどのミニチュアを直径5cmほどのプラスチックのカプセルに入れて、どれが出てくるかわからないコイン専用の自動販売機で販売しているガチャガチャなどと呼ばれている玩具がありますが、仏像のガチャガチャもあります。その販売機をミキオ君から教えられてはじめて目にしたのは一緒に仏像巡りをはじめた7年前のことで、場所は近鉄奈良駅近くの商店街でした。さっそく試しに買ったはじめてのガチャガチャのそのカプセルから出てきたのは金剛力士の阿形でした。それが東大寺南大門像にそっくりの300円にしては肖像性に優れたいい出来で、家に帰ってからつらつら眺めてこれなら吽形も欲しいと思い次の年の奈良古刹巡りからちょっと挑戦してみることにしました。それでその首尾はと言うと、不動明王(東寺講堂像風)、十二神将バサラ大将(新薬師寺像風)、不動明王(東寺講堂像風)、弥勒菩薩(広隆寺宝冠像風)と4回外れて5回目にやっと吽形が来ました。挑戦2年目のことでした。

 ちなみにバサラ大将と弥勒菩薩は一応それらしく見えますが金剛力士より出来は劣り、不動明王は細部の出来がまあまあだったものの顔が右を向きすぎていてイメージを粉砕していました。不動明王はダブって2個あったのでひとつは首を東寺講堂像と同じ正面から少しだけ右へ振った位置に付け直しました。こういうことは、これでもプラモデラ―の端くれ、お手のものです。プラスチック用の小さな鋸で首を切断して切り口の傾きを調整したあと、ここらへんかなという位置にゼリー状の瞬間接着剤を使って固定しました。


1/35スケールの四天王像
 昔も昔、もう半世紀も前、ぼくは一組の四天王像をフィギュアのプラ模型キットを改造して作っています。高さ約5cm小指ほどの極めてちいさな四天王です。タミヤ模型主催の第1回人形改造コンテストに応募するために作ったのですが、プラ模型を作る仏像ファンとしては是非やってみたいことでした。このコンテストは今も続いていて近ごろはみんなとても手の込んだ豪華な作品に作っていますが、当時はフィギュア作りの黎明期、応募作はどれもこれも素朴なものばかりでした。タミヤ模型の人はぼくのを見て、こいつ高校生のくせにこんな抹香臭いものを作って・・・、と思ったことでしょう。ぼくは入賞には至らず佳作でしたが、賞状や缶バッジ、ステッカーなどをタミヤ模型から送ってきました。押し入れのどこかにしまってあります。賞状や景品は押し入れでも四天王像はよく見えるところに飾っています。大事にしていたつもりが50年も経っています、剣や戟はいつのまにかなくなり多聞天の掲げる塔も相輪が折れてしまいました。写真は右から持国天、増長天、広目天、多聞天。

 このとき使ったキットはタミヤ1/35ミリタリーミニチュアシリーズの「ドイツ・パラシューターセット」と「ドイツ・将校セット」だったんじゃないかなと思います。はっきりしないのは随分昔のことで記憶があやふやだし改造後はほとんど原型を留めていないからです。足下の邪鬼は胴体を1/48のフィギュアで頭は1/35のフィギュアで作って合体させましたがどんなキットを使ったのかはよく憶えていません。

 そのころぼくは仏像ファンになりたての高校生で四天王像の実物をこの目で見たことはただの一回だけ、修旅で行った奥州平泉中尊寺金色堂の左右を反転させた姿の持国天像と増長天像でした。それでどうしたのかと言うと保育社のカラーブックスに載っていた東寺講堂像、東大寺戒壇院像などの数枚の写真を頼りに作りました。パテはほとんど使わず甲冑や衣はプラバンをロウソクの熱で加工して作って装着していますが、きれいな工作ではありません。塗装は複雑な模様を描いている暇はなかったしもし時間があっても描けるようなスキルはなかったから単色の朱、黒、紺、グレーなどで単純に塗り分けました。でも顔だけはちゃんと忿怒相に描いています。

 制作は4体同時進行ではなく持国天から始めて持増広多の順に最後は多聞天でした。手探りだったのでいろいろ試しながら1体また1体と作っていったからですが、最初の持国天はやる気満々、それが気持ちはだんだんに下がっていってしまい広目天まではなんとか保ちましたが、最後の多聞天ではもうほとんど切れていました。4体の様式にどことなく統一性がないのはそのせいです。こういう群像の場合は計画的に必ず全部を同時進行で作るべきだということもわからないほど技術も経験も不足していました。それでも今思えばおもしろがって随分と楽しんで作っていたようです。


 その後今日まで仏像のフィギュアはひとつも作っていません。いつかまた作ることがあったらやはり市販のプラ模型キットからの改造で、もっと大きなスケールのキットを使うでしょうね。その予定はありませんが・・・。(2022年7月3日 メキラ・シンエモン)


模型制作と写真:メキラ・シンエモン



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