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佐保路シリーズII

東大寺二月堂 人気のお堂は現役道場

 東大寺の金堂すなわち大仏殿の東、少し高いところにある諸堂を上院と呼んでいます。そこに二月堂と三月堂があります。このふたつのお堂は対照的な存在なのかもしれません。まず建物として二月堂は実忠という坊さんがお水取りの通称で知られる修二会のために建てたと由来がはっきりしていますが、三月堂は東大寺に残る一番古いお堂だということ以外ははっきりしません。また二月堂は江戸前期の再建ですが、三月堂は創建時のオリジナルです。使われ方の現状はと言うと二月堂は今年も修二会が行われた現役の法要道場ですが、三月堂は今ではもう古い仏像を祀るだけでなにかの法要が行われるということはありません。観光スポットとして二月堂は内部が非公開なのに対して三月堂は内陣を有料で公開していますが、二月堂の舞台はいつも観光客や修学旅行の生徒がいっぱい来てにぎやかで、三月堂を訪れるのはほぼ仏像ファンだけで陰気に静かです。


千手堂から二月堂へ
 戒壇院の千手堂から二月堂へは大仏殿の裏を通って行きます。この道は東大寺境内でもっとも景観の優れた道です。お水取りの練行衆は戒壇院の別火坊からこの道を移動して二月堂下の参篭宿所へ入ります。ここにも修学旅行の生徒が小さなグループで歩いています。たむろしているグループもいます。そのそばには鹿の小さな群れ。5月に来る修学旅行は中学校。鹿と修旅の中学生は好い組合せです。大仏殿の裏を抜けると二月堂への道は石だたみの登り道になり二月堂裏参道と呼ばれています。この石だたみの趣は最高です。東大寺というより古都奈良を深く感じさせてくれます。

二月堂裏参道 二月堂西側の屋根とその真下は参篭宿所
二月堂の南側 開いた扉の中で鏡が光ります

二月堂の舞台
 東大寺の主要な伽藍のなかで拝観料を取られないのは南大門と二月堂です。南大門は取りようがないからですが二月堂は内部が非公開だからです。中には入れてもらえなくても扉の外は自由に行き来できます。建物は清水寺と同じ舞台造(懸崖造とも言います)で広縁は開放的だから気持ちがよく、お参りできるように設えてあるし御守りなども売っています。またこの舞台は眺望がよくて奈良を代表するビューポイントのひとつです。広縁を北の端まで行って遠くを望めば大仏殿の大きな屋根が目と同じ高さに、その遥かかなたには生駒の山並みが霞んでいます。奈良市民にとっても親しみやすいところなんでしょう、奈良育ちのミキオ君は中学生のころからよく来ていたと言っていました。一方南の端からは隣に建つ三月堂の天平時代の寄棟造の屋根が見え、下の方には四月堂も見えています。珍しい、四月堂の扉が開いています。あとで覗きに行こう。

二月堂の西側は舞台で礼拝所があってお守りを売っています
舞台からの眺望


 二月堂の北側、石段の登り廊を挟んだ反対側にある休憩所が開いていました。二月堂茶所という札が掛かっていますが北の茶所ともいうようです。今まで一度も入ったことはなかったのですが今日は入ってみます。しんとしてだれもいない、人っ子ひとりいません。テーブルとイスそれに一段高くなった畳敷きがあって俗な観光地の安っぽい食堂のようです。お茶はセルフサービスみたいです。写真やなにかの連絡書きみたいなものが雑然と貼り付けてある壁には修二会で練行衆が入堂のときその足元を照らす大松明が掛けてありました。比較のつもりなのか使用済の松明つまり燃えカスまで掛けてありますが、ちっともおもしろくありません。でも腰を下ろして休めるんだから文句は言いません。ミキオ君は立ったまま平気でもぼくは腰を下せるところがあればためらわずただちに座ります。年を取りました。


 今日は二月堂の扉という扉は全部開けてありました。堂内の換気をしているのでしょうか。中を覗けば神社みたいに丸い鏡が祀られています。修二会は神道的要素を多く含みます。神仏ごっちゃ混ぜ、いいえ違いますよ神仏習合、日本人らしさの表れた宗教観です。日本では仏様を神様が守っています。(2022年6月10日 メキラ・シンエモン)


三月堂の予定が二月堂になりました。つぎこそ三月堂です。巨大乾漆像群を拝みます。



写真:メキラ・シンエモン


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